今回は、遷延性意識障害について触れていくのですが、そもそもこの言葉だけ見てもよくわからない、読めない、という方も多いのではないでしょうか?読み方は「せんえんせい」となります。
一般の方向けにわかりやすく言うと、遷延性意識障害とは、いわゆる「植物状態」のことです。
交通事故が原因で脳に強い衝撃が与えられてしまうと、機能の一部が失われ、植物状態になってしまうこともあります。
こうなった場合、その慰謝料については当然請求すべきです。
今回は、遷延背意識障害になった場合に請求できる慰謝料と損害賠償について見ていきます。
遷延性意識障害の定義とは
では、遷延性意識障害とは具体的にどういった状態を指すのでしょうか?
日本脳神経外科学会では、以下の項目のような状態が3ヵ月以上続いてしまった場合に、遷延性意識障害であると定義しています。
もちろん、適切な治療を受けているにも関わらず、です。
- ①自力で移動ができない
- ②自力で食事ができない
- ③自力でトイレができない
- ④意味のわかる言葉がしゃべれない
- ⑤意思疎通ができない(指を動かすなど簡単な命令は含まない)
- ⑥意識して眼球を動かせない(ただ動いているだけは含まない)
こうした定義からもわかるように、遷延性意識障害は非常に重い症状です。
交通事故の後遺障害等級認定は、全部で14段階あるのですが、その中でも最も上の級(常時介護が必要な第1級1号)が認定されます。
残されたご家族の負担は、想像するだけでも苦痛が伴います。
この負担を考慮すれば、加害者側からは適正な損害賠償額を請求しなければなりません。
成年後見人の選任が必須
上記の定義のままであれば、本人と損害賠償請求について話し合うことなどできるはずがありません。
よって、本人の代わりに法律行為を行う、成年後見人の選任が必須となります。
成年後見人は、家庭裁判所から選任され、本人の代わりに法律行為を行う権限が与えられた者のことです。
多くの場合では、本人のご家族がなるケースが多く、損害賠償請求といった法律行為の他、本人の預貯金などを管理する、財産管理も職務として含まれているため、出来心からの悪用を防ぐ目的で、弁護士などの専門家が「成年後見監督人」として選任されるケースもあります。
慰謝料・損害賠償請求の争点について
成年後見人が選任されたら、次は後遺障害等級認定へと進むことになります。
ただ、通常の後遺障害等級認定と異なり、上記で定義された状態にある以上、ほぼ間違いなく第1級1号が認定されます。
そういった意味では、等級認定のハードルは低いと言えます。
後遺障害の慰謝料については、1級であれば2800万円程度が見込まれます。
しかし、等級認定が終わっただけで損害賠償請求額が確定するわけではありません。
遷延性意識障害の場合、主に以下の項目が争点になる傾向があります。
- ①余命期間について
- ②生活費について
- ③介護費・医療費について
- ④在宅介護のための自宅リフォーム費
- ⑤定額賠償の有無など
上記の中でも、よく争点となるのが余命期間についてです。
保険会社としては支払額を可能な限り抑えたいため、遷延性意識障害になった方は平均的な寿命まで生きられず、余命期間が短いと主張してきます。
いつ死ぬかという、ご家族の立場からすれば苦痛でしかない話題ではありますが、適正な損害賠償請求のためには避けては通れない道です。
確かに、過去にこのような主張が裁判で認められた例もありますが、その逆の例も数多く認められています。
保険会社の主張をそのまま鵜呑みにしてはなりません。
その他にも、通常、損害賠償金というのは一括で支払われるものです。
しかし、毎月支払いをする定額賠償にしておけば、本人が死亡してしまえば支払う必要がなくなります。
保険会社側はこういった、請求側に不利な条件を押し付けてくるのです。
遷延性意識障害については弁護士に相談しよう
遷延性意識障害は損害賠償金が億単位になることも多く、保険会社側との示談交渉もなかなかスムーズには進みません。
そんな時こそ弁護士にご相談いただき、示談交渉をはじめとした手続きを任せることをお勧めします。
ご本人に生じた障害、ご家族が受けた精神的苦痛に対しては適切な賠償金が支払われるべきです。
しかし、保険会社は少しでも賠償金を少なくしようとしてきます。
こうした事実は決して許されるべきことではなく、断固として主張を貫かなければなりません。
当事務所は被害者側の味方として、少しても多くの交通事故被害者の味方となりたいと考えています。
当事務所は交通事故問題に注力しています
当事務所は、交通事故問題に特に力を入れているため、遷延性意識障害に関する問題のご相談も受け付けています。
遷延性意識障害については、過去の裁判例はもちろん、専門知識を駆使して保険会社との示談交渉に臨みます。
それでも解決できない場合は、当然ながら訴訟も視野にいれ、適切な立証を繰り返し、必ず勝ちにいきます。
できることならもとに戻してほしいというのが、残されたご家族の方のご希望だとは思いますが、弁護士は弁護士らしく、法律を武器に金銭という形で、適切な損害賠償金を認めさせるべく、お力添えをいたします。