交通事故によって2つ以上の後遺障害が残ってしまった場合、等級認定ではどのように取り扱われるのでしょうか?また、もともと後遺障害の等級認定されている方が、別の交通事故によってさらに後遺障害が残ってしまった場合はどうでしょう?

このような場合、後遺障害の等級は、「併合」、「相当」、「加重」といった取扱いがされます

併合は2つ以上の後遺障害が残ったしまった場合、相当は後遺障害等級表に掲載されていない後遺障害が残ってしまった場合、そして、加重は今回の交通事故以前にすでに後遺障害がある方が申請する場合に適用されます。

今回は、この3つについての基礎知識をそれぞれ見ていきましょう。

等級認定における併合の基礎知識

1回の交通事故で2つ以上の後遺障害が認められる場合、等級を併合して1つの等級として認定することになります。

もともと等級認定は、基準となっている10ヶ所の身体の部位と、機能ごとに35のグループに分けられた系列から等級認定を行います。

以下にて、併合の原則について抜粋していますので、参考にしてみてください。

ロ 別表第二に定める第五級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合における当該後遺障害による損害につき
重い後遺障害の該当する等級の三級上位の等級に応ずる同表に定める金額
ハ 別表第二に定める第八級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき
重い後遺障害の該当する等級の二級上位の等級に応ずる同表に定める金額
ニ 別表第二に定める第十三級以上の等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロ及びハに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき
重い後遺障害の該当する等級の一級上位の等級に応ずる同表に定める金額(その金額がそれぞれの後遺障害の該当する等級に応ずる同表に定める金額を合算した金額を超えるときは、その合算した金額)
ホ 別表第二に定める等級に該当する後遺障害が二以上存する場合(ロからニまでに掲げる場合を除く。)における当該後遺障害による損害につき
重い後遺障害の該当する等級に応ずる同表に定める金額

(自動車損害賠償保障法施行令から)

上記だけでは見にくいので、要点だけをまとめてみました。

  • ・級以上の後遺障害が2つ以上あれば、重い等級を3つ繰り上げる
  • ・8級以上の後遺障害が2つ以上あれば、重い等級を2つ繰り上げる
  • ・13級以上の後遺障害が2つ以上あれば、重い等級を1つ繰り上げる
  • ・14級以上の後遺障害が2つ以上あっても14級のままで繰り上げはしない

併合にはその他にも、「みなし系列(2つ以上の後遺障害が同一部位にあった場合、系列も一緒に取り扱われる)」、「組み合わせ等級(系列と部位が異なっている2つ以上の後遺障害であってもまとめて取り扱われる)」といった例外もあります。

また、併合があった場合においても繰り上がった等級に後遺障害が見合わない場合は序列に従った等級認定がなされることになっています。

いずれもケースバイケースであるため、2つ以上の後遺障害が見込まれる方は、弁護士に相談し、より適切な等級認定がなされるよう手続きを進めていくことをおすすめします

等級認定における相当の基礎知識

相当とは、後遺障害等級認定表に記載されていない後遺障害があった場合に適用されます。

後遺障害等級認定表では、かなり細かな部位に分けて記載がされているものの、人間の身体の部位や機能についてすべて記載されているわけではありません。

等級認定では、そういった例外箇所に後遺障害が残ってしまった方に対しては、相当という取扱いを行っています。

わかりやすく言えば、相当とは、例外箇所の後遺障害の症状と記載箇所の後遺障害の症状とを比較し、より妥当であると考えられる等級が認定されるというもの

相当に該当する主な後遺障害は、味覚や嗅覚の喪失、減退、外傷性散瞳などがあり、それぞれ後遺障害等級11~14級程度に相当すると認定されています。

もちろんこれ以外にも後遺障害と認められれば、相応な等級認定がなされることになっています。

後遺障害等級認定表に記載がないからといって等級認定をあきらめる必要はありません。

等級認定における加重の基礎知識

後遺障害の等級認定というのは、もともと健康だった人を対象に作成されています。

しかし、中には生まれつき、もしくは他の原因で後遺障害を持っている方もいらっしゃいます。

こうした、以前から後遺障害の等級認定がされている方の場合、新たな交通事故によって同一箇所にさらに障害を負ってしまった場合、「加重」という取扱いがなされることになっています。

なお、ここでいう以前からの後遺障害というのは、交通事故によるものであったかどうかは関係ありません。

そして、加重が認められる場合は、加重された後遺障害の保険金額の中から、もともとの後遺障害の保険金額分を相殺した上で保険金が支払われることになっています。

法第十三条第一項の保険金額は、既に後遺障害のある者が傷害を受けたことによって同一部位について後遺障害の程度を加重した場合における当該後遺障害による損害については、当該後遺障害の該当する別表第一又は別表第二に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額から、既にあつた後遺障害の該当するこれらの表に定める等級に応ずるこれらの表に定める金額を控除した金額とする。

(自動車損害賠償保障法施行令から)

併合・相当・加重については当事務所にご相談ください

併合・相当・加重は、認められるか否かによって、支払われる保険金額に大きく影響があるため、申請の際は相応の専門知識が求められます。

特に、後遺障害診断書については、各要件を満たしたものを提出しなければなりません。

しかし、医師によっては、等級認定に疎いこともあり、診断書に記載漏れのあるケースが多発していることからも、交通事故問題に強い弁護士のサポートが求められます。

医師による医学的な視点はもちろん、法律のプロである弁護士の視点という2つをクリアした後遺障害診断書を提出することで、より希望に近い等級が認められる可能性が高くなります。

当事務所では、交通事故問題に力を入れており、そうでない法律事務所と比べると安定かつ、充実したサポートが受けられます

安心して当事務所にお任せください。

後遺障害等級認定は、1つ違うだけで支払われる金額も大きく異なるため、少しでも良い結果が出るよう、当事務所が全力でお手伝いさせていただきます。

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