交通事故は悲しくも人の命を奪ってしまうこともあります。

交通事故そのものをなかったことにはできないため、もし、死亡事故になってしまった場合は、残されたご家族が代わりとなって、加害者に対して損害賠償請求をすることができます

今回はその中でも、「逸失利益」に着目してご説明していきます。

まず、逸失利益というのは、死亡していなければ、将来に渡って得られていたはずの収入相当額のことです。

死亡事故では、この逸失利益を損害賠償として請求できます。

死亡事故の逸失利益を求める計算方法

死亡していなければ、将来どれだけ収入を得ることができたかというのは、現実に証明することはできません。

そこで、死亡事故の逸失利益は以下の計算式に当てはめて求めることになります。

「1年あたりの基礎収入×(1-生活費控除率)×稼働可能期間に対応するライプニッツ係数(ホフマン係数)」

では、計算式に登場する項目を1つずつ、以下にて詳しく見ていきましょう。

1年あたりの基礎収入

1年あたりの基礎収入は、サラリーマンや公務員といった固定給の場合、求めるのはそれほど難しくはありません。

過去数年間の平均を取ることで、1年あたりの基礎収入を算出できます

しかし、ここで問題になってくるのは、固定給の存在しない個人事業主や、給与のほとんどが歩合に依存している方の場合、過去数年間の収入にバラつきがある場合があります。

支払いをしなければならない保険会社としても、なるべく基礎収入が低くなるように計算してくることは間違いなく、争点になりやすい部分と言えます。

なお、学生や専業主婦(主夫)の場合、中には収入が無い方もいらっしゃいます。

そういった場合は、賃金センサスの平均賃金を基準にしています。

賃金センサスとは、厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の結果をまとめたもので、地域や企業の規模などの他にも、性別や年齢、学歴などの労働者の属性別にみた賃金の実態が掲載されています。

基礎収入の算出が難しい場合に役立つ資料です。

生活費控除率

人が亡くなったということは、生活費がかからなくなったということ。

亡くなった方が得られる利益が失われたと同時に、生活費の負担も必要なくなったため、この分は控除しなければ当事者間に不公平が生じてしまいます。

それが生活費控除率と呼ばれるもので、以下のような3つの基準で控除されることになっています。

なお、以下の基準は法律で厳密に定められているわけではないため、あくまでも基準の1つでしかないのだと覚えておくようにしましょう。

自賠責基準

  • 被扶養者がいる方 35パーセント
  • 被扶養者がいない方 50パーセント

保険会社基準(旧任意保険会社の統一基準)

  • 被扶養者が3人以上いる方 30パーセント
  • 被扶養者が2人以上いる方35パーセント
  • 被扶養者が1人いる方 40パーセント
  • 被扶養者がいない方 50パーセント

裁判所基準(赤い本の基準)

被害者が一家の支柱(生活費の多くを稼いでいる方)であり

  • 被扶養者が1人いる方 40パーセント
  • 被扶養者が2人以上の方 30パーセント

被害者が一家の支柱でなく

  • 女性の方 30パーセント
  • 男性の方 50パーセント

稼働可能期間

稼働可能期間とは、この先、何年間収入を得るために働くことができたかというものです。

この期間を算出するには、始期と終期が必要になり、始期については交通事故によって亡くなった年齢になりますが、終期については一概に求めることができません。

その方が、何歳まで働くことができたのか、というのは想像の域を出ることがないのです。

そこで、稼働可能期間を機械的に求めるために、厚生労働省が作成している「生命表」を基準とし、一般的には67歳を終期にすることで稼働可能期間を求めています。

亡くなったのが40歳なら、稼働可能期間は27年です。

しかし、もし亡くなった方が67歳に近い方だった場合、稼働可能期間が1~2年、またはマイナスになってしまうこともあります。

こういった場合は、稼働可能期間ではなく平均余命の2分の1か、67歳までの年数のいずれか長いほうを終期とするのが一般的です。

ライプニッツ係数(ホフマン係数)

ライプニッツ係数(ホフマン係数)とは、中間利息控除をするために用いられます

通常、逸失利益を含む損害賠償金は、一括で支払われることになるのですが、この場合、受け手側は期間の利益を得ることになります。

どういうことかというと、将来に渡って得るはずだった利益というのは、一括で得られるわけでは当然ありません。

受け手側は、一括で受け取ることで、本来その利益を得るためにかかった期間を運用に充てて、資金を増やすことも出来てしまうのです。

これを避けるための中間利息控除です。

中間利息控除とは、受け手側の期間による利益を控除し、支払い側の不公平を無くすために行われます

死亡事故の逸失利益でお困りの方

死亡事故の逸失利益は、上記のような計算方法で求めることができます。

通常は、保険会社側がその金額を算定してくれますが、上記からもわかるとおり、見慣れない言葉がたくさん出てくると感じた方が多いのではないでしょうか?そのため、よくわかっていないまま保険会社側の提案を鵜呑みにしてしまうケースがよく見受けられます。

少しでもわからないと感じたら、しっかりと専門家に確認することが大切です。

当事務所では、死亡事故の逸失利益でお困りの方に、適切なアドバイスをしています

不安なことがあれば、ぜひ当事務所にお気軽にご相談ください。

慰謝料・賠償金の関連記事

後遺障害の逸失利益の計算方法  

後遺障害の逸失利益とは、簡単に言えば、「交通事故に遭わなければ、後遺障害を負うこともなかった。 この後遺障害がなければ、これだけの収入を得られたはず。 」というものです。 もう少し具体的に説明すると、営業のサラリーマンが…

入通院慰謝料の計算方法【自賠責と裁判所基準の違い】 

交通事故が理由で入院、または通院が必要になってしまった場合、かかった費用に加えて、入通院慰謝料として相手保険会社に請求することができます。 慰謝料というのは、精神的苦痛に対する損害賠償のことを指しますが、この苦痛を数値化…

休業損害の計算方法(主婦・サラリーマン・自営業者) 

交通事故によって入院や通院といった治療が必要になってしまった場合、当然、仕事は休まなければなりません。 本来得られることが出来た収入を、得ることができなくなってしまうのです。 これはまさに、交通事故による損害の一部と言い…