現在、任意保険の加入者は全ドライバーの7割程度であるのに対し、未加入者は3割程度と言われています。
つまり、交通事故の被害に遭ってしまった場合、3割程度の確率で相手が任意保険に未加入というのは現実にも起こり得るのです。
さらに、加害者側に支払い能力がないとなれば、被害者側は満足に損害賠償を受けられない可能性も否定できません。
しかし、加害者側が任保険未加入であっても、まったく補償を受けられないわけではありません。
今回は、相手が任意保険に未加入の場合でも、可能な限り多く受けられるよう賠償金請求について詳しく説明します。
加害者の自賠責保険に請求
加害者が任意保険に未加入であっても、自賠責保険への加入は法律で義務づけられているため、まずはここから確実に補償を受けることができます。
最低限度の補償ではありますが、まったく受けられないのとでは雲泥の差であるため、しっかり請求していきましょう。
なお、自賠責保険で受けられる補償は、主に以下の項目となります。
- 治療費・入院雑費(入通院などにかかった費用)
- 付添看護日(医師が必要と認めた場合、12歳以下の子どもに付添人がつけられる)
- 交通費(入通院のための交通費実費 場合によってはタクシーも可)
- 休業損害(1日あたり6100円)(※)
- 診断者作成費
- 慰謝料(肉体的・精神的苦痛に対するもので、治療期間中に1日あたり4200円)
※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した休業損害については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した休業損害については、1日につき原則5,700円です。
ただし、これらすべての項目での上限が120万円までとなっている点に注意です。
また、自賠責保険というのは、「人的損害」に対して支払われるのみで、車両の修理費といった物的損害に対しては支払われない点についても注意しましょう。
入通院には健康保険を使う
交通事故の怪我の治療は、健康保険を使うことができます。
健康保険を使えないというのは誤認識なので、病院の窓口で言われた際も、健康保険を使いたいとしっかり伝えてください。
健康保険を使うことで、治療費が3割負担ですみます。
当然、治療費を抑えられるため、上記した120万円に到達する可能性を低くすることができます。
ただし、治療内容によっては、自由診療でしか受けられないものもあるため、自身の身体のためには、素直に治療を受けるようにしましょう。
仕事中の事故なら労災保険を使う
もし、交通事故が仕事中に起きたのであれば、労災保険を使うことができます。
これは加害者側の保険の加入・未加入に関係なく利用できるため、他の保険よりも手厚い補償を受けられるメリットがあります。
特に、特別支給金は、自賠責保険にて休業損害補償を受けた場合でも、2割分の受け取りができるため、自賠責の限度額である120万円を超えて受け取れる場合もあります。
自身が加入中の任意保険の利用
加害者が任意保険に加入していなかったとしても、自身が加入中の任意保険を適用できる場合があります。
たとえば、人身損害保険がついていれば、加害者側の状況に関係なく、交通事故で怪我をしたことに対して保険金が支払われます。
そして、この補償の内容には同乗者も含まれるため、同乗者がいた場合は、その方にも加入中の任意保険について確認してみましょう。
次に、無保険車傷害保険がついていれば、加害者が保険未加入であった場合でも、その不足分を自身の任意保険会社が負担してくれます。
また、契約内容次第ですが、弁護士に依頼することで、裁判所基準での補償を受けられる場合もあります。
もし、自身の加入中の任意保険に上記内容が含まれていなかった場合でも、ご家族が加入している任意保険も確認しましょう。
中には、被保険者の家族に対して適用される保険もあります。
加害者が自賠責保険に未加入だった場合
自賠責保険への加入は義務であるため、現実にあってはならないことですが、中には自賠責保険にすら加入していない方もいます。
そういった場合は、「政府保障事業」という制度を利用することで、国から補償を受けられます。
とはいえ、こちらも自賠責保険とまったく同じ金額を上限となっています。
また、手続きも非常に面倒で、まずは健康保険や労災保険からの給付を優先し、それでも不足した倍に、政府保障事業の利用を検討しましょう。
加害者への直接請求
上記からもわかるように、自賠責保険による保障は十分なものとは言えません。
不足が生じれば、当然、加害者に対して直接請求することができます。
しかし、加害者側に保険会社が付いている場合と異なり、交渉も加害者と直接しなければならないため、難航する可能性が非常に高いです。
また、加害者としても自賠責を超える賠償金を払いたくないと考えているため、支払いにまったく応じてくれないなんてケースも現実には珍しくありません。
こういった場合は、少しでも回収の可能性を上げるためにも弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士であれば、加害者とのすべての交渉を任せることができますし、場合によっては法的手続きへの着手も可能です。
もちろん当事務所でも、加害者への直接請求についてのご相談を受け付けています。
被害者が泣き寝入りすることがないよう、全力でサポートさせていただきます。